高級な紅茶とその他の紅茶の違いは?高級な(値段の高い)紅茶の特徴について

高級な(値段の高い)紅茶は、端的に言うと「高価な茶葉」を使い「ブランド力」が高い業者が製造している紅茶です。つまり高級な紅茶は、使用茶葉とブランドに特徴があり、茶葉の価格とブランドの付加価値が高いから値段も高くなるのです。
高価な茶葉の特徴や値段の決まり方は産地ごとに大きく違いがあるので、ここでは分かりやすくするために最も有名なダージリン茶葉の事例を主に引用して解説します。
茶葉の産地の違い
ダージリン、ウバ、キーマンで生産される茶葉は「世界三大紅茶」とも言われ、香り高く上質な高級紅茶として有名です。
中でもダージリンの茶葉は最高級といわれ高値で取引されています。
世界30カ国以上で年間400万トンも生産されている紅茶は、主にインド、スリランカ、ケニア、中国で生産され、産地の気候風土によって茶葉の品質や香り味わいにそれぞれ個性が出てきます。
一般的に標高が高く冷涼な環境で栽培される茶葉は香りの優れたものが多いと言われており、その様な気候条件の産地で栽培された紅茶ほど、価格も高くなります。最もその気候条件を満たしているのがインドのダージリン、スリランカのウバ、中国のキーマンの3つの産地なのです。

世界3大紅茶の産地について
- ダージリン(インド)
- 「マスカテルフレーバー」と呼ばれる独特の香り高さで「紅茶のシャンパン」とも称される高級紅茶の産地
- ダージリンは、北インド、ヒマラヤ山麓の750m~2,000mに位置し、北方に標高世界第3位の高峰カンチェンジュンガが遠望できるほどの高地にある紅茶産地です。谷底から山頂までの険しい山の斜面に中国種、中国交配種やアッサム交配種の寒さに強い茶樹がびっしりと植えられています。
気候はインド平野部に比べて冷涼である一方、熱帯に属するため冬でも最低気温0℃を下回ることもなく、降雪も少ないため茶樹栽培に適しています。 - 日中の高温と夜間の低温の差が大きく、夏季を除けば一日の寒暖の差は10℃ほどもあるため、一日の間で霧が何度も発生し、谷底から山頂まで茶園を覆うように上昇していきます。 この深い霧が「マスカテルフレーバー」と呼ばれるダージリン独特の香り高さとを味を生み出すといわれています。
- 茶葉の生産量はインド全体紅茶生産量のわずか1%未満しかなく、ダージリン茶葉100%のものは大変希少で最も価格が高いと言われています。日本市場に出回っているダージリンと名の付く紅茶は少しだけブレンドされているものも多い為、購入する際には注意が必要です。
- ウバ(スリランカ)
- 「ウバフレーバー」と呼ばれる甘い刺激的な香りが魅力の高級紅茶の産地
- ウバは、インド南東部の島国スリランカ(旧セイロン)の中央部山岳地帯に位置する紅茶産地です。世界第3位の紅茶産出国スリランカでは産地の標高によって、1,300m以上の高地(ハイグロウン)、670m~1,300mの中地(ミディアムグロウン)、670m以下の低地(ローグロウン)の3つに区分されていますが、ウバは最も高地であるハイグロウンに区分される紅茶産地です。標高1,400~1,700mの岩肌が見えるような斜面に茶畑が広がっています。
- 冷涼な気候ながらも、日中の高温と夜間の冷気による寒暖差の影響で霧が発生しやすいことが特徴です。特に7~8月に吹く南西モンスーンの乾いた風の影響により、その時期に収穫された茶葉は「ウバフレーバー」と呼ばれるバラやスズランのような甘い刺激的な香りを生むと言われています。
- キーマン(中国)
- 「紅茶のブルゴーニュ酒」とも称される欄のような甘い香りを特徴に持つ高級紅茶の産地
- キーマンは、中国上海の西に位置する安徽省祁門県の山岳地帯に点在する歴史ある高級紅茶の産地で、キームンまたはキーモンとも呼ばれています。
- 標高1,800m以上を誇る高地で雨が多い気候のため、多湿で気温が低く霧が発生しやすいという特徴を持っています。また、深い森に覆われ日光に殆ど当たらない地理条件のため、テアニン(鎮静作用があるアミノ酸の一種)の含有量が多いことも特徴で、芳醇な味と蘭の花のような独特の香りを生み出すと言われ、その茶葉は「紅茶のブルゴーニュ酒」とも称されています。
- 収穫時期が梅雨から夏にかけての6~9月と短く、収穫量も極少量であるため、希少価値が非常に高く最高品質の茶葉には驚くような高値が付くこともあります。
世界で殆ど流通していない
最高級ダージリン産茶葉を使用した
ボトリングティー
茶葉の収穫時期の違い
同じ産地の茶葉でも、いつ収穫されたかで値段は変わります。その産地の紅茶の旬にあたる収穫時期のことをクオリティシーズンと言いますが、例えばダージリンでは年に3回のクオリティシーズンがあり、そのうち、ファーストフラッシュとセカンドフラッシュは特に高値で取引される傾向があります。
ダージリンの3つのクオリティシーズンには、ファーストシーズン(春摘み)、セカンドフラッシュ(夏摘み)、オータムナル(秋摘み)があり、それぞれに特徴的な「香り・色・味」を持ちます。3シーズンの中ではファーストフラッシュとセカンドフラッシュの価格が比較的高くなることが多いです。
また、同シーズンでも収穫時期次第で茶葉の質が変わる為、収穫期の出始めやピークの時期に摘まれた茶葉は特に質が高いと人気が高く、高値になります。
- ファーストフラッシュ(2月下旬~5月上旬収穫)
茶葉収穫量が少なく高値で取引される春摘み茶葉 - 茶葉は浅い緑色で柔らかく、水色は淡く澄んだ黄金色が美しい春摘み茶葉。日本やドイツなどで特に人気が高い。他のダージリン紅茶とは少し製法が異なり、軽発酵で香りを最大限引き立たせる製法が用いられいるためフレッシュで爽やかな渋みとみずみずしい花のような香りが特徴的。また、この時期のダージリン茶葉収穫量は少なく高値で取引されることも多い。
- セカンドフラッシュ(5月下旬~7月上旬収穫)
独特のマスカテルフレーバーを感じる事の出来る夏摘み茶葉 - オレンジ色の水色が特徴で、ダージリン独特のマスカテル・フレーバーをしっかりと感じる事のできる夏摘み茶葉。華やかな香りと濃密な飲みごたえは、香り、味ともに充実した茶葉として評価が高く、高級ブランドから販売されるダージリンに使用される。
- オータムナル(10月下旬~11月下旬収穫)
一年で最も甘みが凝縮される秋摘み茶葉 - 厚みのある茶葉で深みのあるオレンジ色の水色が特徴の秋摘み茶葉。冷涼で乾いた秋の気候により甘み成分が茶葉に凝縮されるため、芳醇でまろやかなコクが増し、一年で最も甘いダージリンになる。他の2シーズンに比べるとお手頃な価格で手に入りやすい。
茶葉の生産茶園の違い
高品質の茶葉を生産する茶園はある程度決まっており、どの茶園で栽培されたかでも値段が変わります。
例えばダージリンでは、「キャッスルトン茶園」「ジュンパナ茶園」「ギダパハール茶園」は特に品質の高い最高級茶葉を生産する優良茶園として評価が高く、その茶葉は高値で取引されることが多いです。
ダージリン地域には87の茶園があり、標高750m~2000mの山地の急斜面に茶樹が栽培されています。昼夜の気温差が激しく霧が多いことから紅茶づくりに最高の気候風土だと評価されるダージリンですが、標高の高さ・渓流の有無・栽培技術・茶摘み技術・製茶技術など、茶園によって違いがあり香りや味わいにも個性が出ます。特に品質の高い最高級茶葉を生産すると評価の高い優良茶園をいくつか紹介します。
- キャッスルトン茶園(Since 1885)
- ダージリンの中でも最高峰の風格と品質を誇る、英国王室御用達茶園
- キャッスルトン茶園は、標高の高い恵まれた地形と地質を活かし確かな技術で高品質な紅茶を作り続ける、ダージリンの中でも最高峰の風格と品質を誇る人気茶園です。
- その紅茶は英国王室をはじめとする世界中の紅茶好きが愛してやまない逸品で、品格の高いマスカテカルフレーバーを有するセカンドフラッシュをはじめ各クオリティシーズンの茶葉は特に評価が高く、高値で取引されることが多いです。
- ジュンパナ茶園(Since 1899)
- オークションで何度も過去最高値を更新した実績を持ち、各茶園からも一目置かれる名門茶園
- ジュンパナ茶園は、急斜面の茶畑の中に渓流を持ち特に霧が発生しやいという恵まれた栽培環境にありながら、生産量よりも品質にこだわり栽培・製茶技術を磨き続け常に最高級の紅茶を生産していることから、ダージリンの他茶園からも一目置かれている名門茶園です。
- お茶業界のオリンピックと言われる国際品評会「World Tea Expo」のダージリンティー部門では3年連続金賞を受賞し、インド政府局公認のティー・オクションで何度も取引価格の最高値を更新する実績を持っているため、高値で取引されることが多いです。
- マカイバリ茶園(Since 1859)
- 無農薬栽培からさらに進化したバイオ・ダイナミック農法を実践する茶園
- マカイバリ茶園は、ダージリン地方で初めて無農薬栽培を開始した茶園で、現在では化学肥料や農薬を使わないだけでなく、月の満ち欠けや天体の動きも茶栽培に取り入れた「バイオ・ダイナミック農法」を実践する茶園としても有名です。
中でも108年の1度の天体配置である2014年の特別な満月の晩に摘み採られた「シルバー・ティップス・インペリアル」は紅茶史上最高値で取引された実績も持つことから、高値で取引されることが多いです。
その他ダージリンでは、マーガレッツホープ茶園、オカイティ茶園、タルボ茶園、グームティー茶園、ギダパール茶園の茶葉が高値で取引されることが多いです。
茶葉の摘み方(摘採・Plucking)の違い
紅茶は「摘み方」「摘む時間」でも味と価格が変わります。「一芯二葉」「一芯三葉」などと呼ばれる摘み方がありますが、例えばダージリンでは、早朝に空が白み始めてから太陽が昇るまでのわずかな時間に「一芯二葉」と呼ばれる手法で収穫された、芽吹く寸前の柔らかい新芽は収穫量が少なく、高値で取引されることが多いです。
一芯二葉の摘み方とは、まだ芽が開いていない状態の若い新芽とその下の2枚の葉のみを摘み採る手法で、良質な紅茶を作るための理想的な摘み方とされています。ダージリンでは、プラッカーと呼ばれる茶摘み女性達の手摘みにより収穫されています。
また、一部の最上級品では摘む時間にも細心の注意が払われます。早朝に空が白み始めてから太陽が昇るまでのわずかな時間に収穫される、芽吹く寸前の柔らかい新芽は、雑味が少なく旨味成分が多いため香り味わいが特に良いと言われおり、収穫量も少ないことから、高値で取引されることが多いです。

茶葉のグレードの違い
紅茶における「グレード」とは茶葉の良し悪しを示すのではなく、茶葉の大きさや形状を示すものです。どの「グレード」が高値になるかは産地によって異なり、また定義も産地ごとに変わることが多いですが、例えばダージリンでは「スペシャルティ」と呼ばれるSFTGFOP(Special Fine Tippy Golden Flowery Orange Pekoe)グレードが最高級品として非常に高値で取引されることが多いです。
グレードは、茶葉のパッケージなどにアルファベットの文字列で表記されていることが多いですが、アルファベットの各文字が茶葉の部位・色・形状などを表しているため、グレードを見てどのような茶葉なのかをおおよそ判断することができます。
以下はダージリン産茶葉のグレード表記の一例です。丁寧に摘み採られた上質な新芽(ティップ)を多く含む茶葉ほど上級となり、FTGFOPがインド政府紅茶局により最上級グレードと認定されています。さらに、それを上回る極僅かな最上級品質の茶葉として「スペシャルティ」と呼ばれるSFTGFOP(Special Fine Tippy Golden Flowery Orange Pekoe)グレードも存在し、世界中の紅茶バイヤーが買い付けるインド公認オークションでも非常に高値で落札されることが多いです。

茶葉のテイスティング評価の違い
紅茶の茶葉は、生産茶園や収穫時期などにより香りや味わいが異なるため、茶葉の値段は、最終的にプロの紅茶鑑定士によるテイスティングで香りや味を評価し、オークションにかけて決定されます。テイスティング評価の高い茶葉は、当然ながら高値で取引されます。
産地ものの茶葉は、生産茶園・栽培区画・収穫時期などの少しの条件の違いで香りや味が変わります。
例えばダージリンの産の茶葉は、生産茶園・栽培区画・収穫時期・グレードに応じて、100Kg程度のロット毎にDJ1、DJ2…という通しナンバーや製造ナンバーがつけられ管理されます。各ロットからは少量のサンプルがとられ、ブローカー・エージェント(紅茶商社)に在籍するプロの紅茶鑑定士のテイスティングにより品質チェックを受け、公開オークションにかけて決定されます。当然ながらテイスティング評価が高い茶葉が高値で取引されることが多いです。

業者のブランド力orブレンド力の違い
伝統がありブランド力の高い業者や、フレーバーティーを創り出す技術の高い業者の製品は値段が高くなります。
紅茶の伝統は古く、300年以上も続くブランドもあります。ブランドの歴史の長さは、発売している紅茶の品質に対する信頼の証。長い年月をかけて培われた技術は、ブランド力の高さに直結します。
このように、歴史が古くてブランド力の高い業者から発売されている製品は、もちろん値段が高くなります。1707年創業の「フォートナム&メイソン(F&M)」や、1834年創業の「ハロッズ(Harrods)」等のブランドの製品が有名です。
さらに、紅茶に果物やハーブを加えて香りや味をつけたフレーバーティーを創り出す、高いブレンド力に定評のある業者の製品も値段が高くなります。ラベンダーやバニラ等で爽やかに香り付けされた、「ベッジュマン&バートン(Betjeman & Barton)」のエデンローズや、チベットの花と中国の果実のオリエンタルな香りが特徴的な、「マリアージュフレール(MARIAGE FRERES)」のマルコポーロ等の製品が有名です。
【ブランドの歴史で比較】ギフトにぴったりの高級紅茶ブランドTOP29